空想じじい

人生は七転び八転び。

我は海の子

我は海の子 21

兄貴はとっちゃんの事は大嫌いだったと思う。中学を出たら家の跡を継ぐんだから、漁業と農業をするのに学問は必要ない、ととっちゃんにいつも言われていた。兄貴は勉強もスポーツも大好きだったので進学したくて、一生懸命にとっちゃんを説得しようとしてい…

我は海の子 20

夏休みに入ると間もなく稲刈りが始まりコウも兄貴も朝から晩まで手伝う、コウは昼の休みには魚釣りをする。 そして薄暗くなったら帰り支度が始まる、兄貴は竹の棒を持って田んぼの中でカエルを追いかけて叩いて失神させて遊び出す、コウも真似をしてカエルを…

我は海の子 19

かあちゃんが言う、コウよ、嵐の海にはゴボシがいるから泳いだら駄目だぞ、えっ!ゴボシって何?。波の大きな日に出てきて泳いでる子供の尻を抜くんや。えっ!するとどうなるの?。死ぬんや。 え~~~っ、ゴボシってどんな大きさ?どんな色?魚?。違うんや…

我は海の子 18

隣村のじいさんが死んで、その通夜の夜に死んだじいさんが、むくっと起き上がってきて、あれ~?みんなどうしたんだ!。 ひぇ~~~と言ってみんなが腰を抜かした、と言う事が2回ほどあった。この地域には病院がないので年寄りが熟睡してると、周りの人達が…

我は海の子 17

やっさんと呼ばれてる叔父さんが家から坂を下っていった所に住んでいる、やっさんは器用で家もブロックで自分で作ってるが2階が中途半端なままに何年も未完成の状態で住んでいる。 でも魚突きの名人で村では有名な人だ、夕方5時くらいにになるとモリを持っ…

我は海の子 16

夏休みのある日、突然こうふんして良ちゃんがやって来た、コウ!昨日めちゃくちゃ大きいハイオが釣れる場所を探した、ちょっと遠いけど今から行こう。えっ!本当か?行こう行こう。 2人は釣竿を持ってすぐに出かけた、山の中の獣道を約2時間ほど歩いた、良…

我は海の子 15

もう夏の夜の8時、外は真っ暗になった、町内放送がある「あ~っ、あ~っ、え~っ、え~っ、今月の売り上げ金を取りに来てくださいガチャガチャガチャ。」 コウよ!漁協に今月の売り上げ金をもらいに行って来い!え~~~っ嫌だな~でも逆らえばとっちゃんに…

我は海の子 14

魚釣りのヘタなとっちゃんは毎日夕方になるとサバの塩辛で焼酎を飲む、家は貧乏なのでよほどの大漁をしないと一升ビンでは買えない、めったに大漁をする事がないからいつも一合づつ買う。 コウの家は海抜20メートルくらいの所に建っていて海まで直線距離で…

我は海の子 13

5人は灯台のそばの神社に向かった、もう夕暮れまじかだった、この神社の藪には神の使いの白いキツネが住んでいて、そして暗くなるとそのキツネが白い着物を着た人間にばけてお供え物を食べにくると言われている、ちょっと不気味な神社だ。じゃんけんで市君…

我は海の子 12

おーいコウ、早く登ってこいよ!わかったよ今登ってるよ。でもコウは腰から下に力が入らない、この時はまだコウは自分が高所恐怖症だとは気が付いてなかった、どうしたんだろう?体も振るえてる。 途中まで登ったら、はしごの1本が錆びてなくなってる、そこ…

我は海の子 11

当時、台風の後の海岸の波うち際はコールタールで真っ黒になっていて歩くと足の裏が真っ黒になった。 そして背中の曲がった魚やら、ヒレのない魚がたくさん泳いでいた、特にひどかったのはボラだ、波打ち際を群れで泳いでくる、小学校の高学年のコウたちは、…

我は海の子 10

この小さな漁師町にバスは1日に朝、昼、晩の3本しかない。そして夏休みが来ると従兄弟の秀さんが2週間くらい家に滞在する、コウより3歳年上だ。毎日泳いだり、魚釣りに行ったり、カブト虫を取りに行ったり、将棋をしたりして遊んでくれる、コウは楽しく…

我は海の子 9

小学校の3年生の頃だった、通知表をもらってくるとじいちゃんに見せる。通知表は5段階評価だった、お~~~っ電信柱が多いの~アヒルも泳いどる、カモメも1匹飛んどるの~ハハハハ~、コウの通知表はなかなか絵になって~ええな~。コウの兄貴の通知表な…

我は海の子 8

コウの住む漁師町はよく映画やテレビのロケ隊が来る、特に東映の時代劇の撮影がしょっちゅう来ていた、有名な俳優さんも来てる、だいたい砂浜でのロケだ、自然がたくさん残ってるし道路も舗装されてないし車もほとんど通らない、文明の力のなかった時代の撮…

我は海の子 7

通称「アニ~」アニ~は両手の指の数を超えると、い~っぱいと言う、11でも100でも同じ、い~っぱいだ。コウの隣町に住んでる、コウより3歳ほど歳上だ。農業も漁業も暇になると、コウの兄とアニ~は一緒に土方のアルバイトをしている、コウの兄がアニ…

我は海の子 6

靴は穴が開いたくらいでは新しい靴は買ってもらえない、靴の前の部分が獅子舞の口のようにパクパクになってやっと新しい靴を買ってもらえる、新しい靴を買って欲しくてコウはよく自分で靴を破いた。朝昼晩3食、魚の干物ばっかりや、今日はその魚の干物もな…

我は海の子 5

この漁師町では、トドみたいな体形の嫁さんが最高級だ、1年中海に潜ってるので、夏でも海に潜ってると寒いから、トドみたいに太ってると寒さに耐えられる、料理は出来なくても問題ない、オマケに力が強ければ100点満点の嫁さんと言う事になる、顔なんか…

我は海の子 4

コウがまだ小学生の頃「冬磯」と言うのがあった、1月から2月にあわび取りをする、時間制限がある、確か冬は30分くらいだったと思った、当時はウエットスーツもなかった、友達が何人かいくと言うのでコウも一緒に行くことにした、浜に着いたらすでに大人…

我は海の子 3

じいちゃんは竹細工も上手い、よく竹で籠を編む、コウはずーと見てるので覚 えてしまった、じいちゃんの横で一緒に作る、でも最後の上の部分は力が要る のでコウには出来ない、じいちゃんがやってくれる。それから「もんどり」と 言うウナギを取る籠も竹で作…

我は海の子 2

コウは学校には行かないで、1日中じいちゃんと遊んでいる、じいちゃんも、 とっちゃんも、学校に行けとは言わないし、コウは学校に行くよりじいちゃん と居る方が面白いからだ。じいちゃんは家の棟続きで鍛冶屋をやっていて、手 先が非常に器用で繊細な神経…

我は海の子

突然、ぼ~~~っ、ぼ~~~っ、っと船の汽笛がこだまする、時計を見ると夜 中の1時くらいだ、海が荒れて雨が降って風も強い、小学生のコウは岬の突端 の風光明媚な所に住んでいる、陸の孤島とも言う。しょっちゅう船が 座礁し ている、家族全員起こされる…

クリスマスケーキ

随分昔、家は漁業だけど自給自足できるだけの田んぼと畑も少しあったので農 耕用の黒い牛を飼っていた、毎日僕が餌をやってブラッシングをしてやってい た、僕が牛小屋に行くと走ってよって来るそして上を向く、ブラッシングをし ろと言ってるのだ、かわいい…

じいちゃんのニワトリ

まだ小さい頃、家は貧乏で金がなかった、親父は魚釣りのへたくそな漁師だっ た、何処の家もイナダをたくさん釣って大漁をしてるのに親父は売れないサバ の大漁だった、大量のサバの塩辛を作って毎日食べていた。親父が大漁をした と言う記憶が1度もない。豆…

はっちょみ爺さん

随分前のはなしになる、陸の孤島と言われてる所に住んでいた、病院もないの で、急病になったらまず助からない。盲腸炎でも運が悪いと死ぬ、病気やけが は祈祷師の様な人がいて拝んでもらう、出来物ができると祈祷師にわけの分か らない紙を張ってもらう、お…

中学生の頃

今日葬式があるよ、え!、もう帰りの心配が始まる、僕の村には中学がない、隣村まで4キロを自転車で通ってる、途中に墓場が2つある、車はほとんど通らない、しかもいやな事に墓場は道路沿いにある、当時は土葬だ、「埋葬した夜に埋葬された人が出てきて、墓…

生まれ育った所

リアス式海岸で、伊豆の景色がそっくりだ、僻地とか陸の孤島、と人は呼んでました、郵便局も病院も信号も水道も消防署も警察もない、小学校の全校生徒が100人位、よく山火事が起こってた、田んぼのあぜの草を燃やしていて、火が山に燃え移る、見に行くと…

味方が敵

祖父は戦争に2回行ってる、と聞いてる、決して自分から話そうとはしなかった、僕の方から聞けば話してくれる、赤紙と言うのが来ると戦争に行かなければいけない、じいはな位は偉くなかった、しかし体はえらかった、めちゃくちゃ疲れた、毎日殴られてた、な…

600キロをやって来た

昨日私の2歳違いの兄がやって来た、家まで600キロある、時速600キロで1時間、歩くと600キロ、けんけんしたら600キロだ、遠い、前の日に僕が疲れて晩ご飯が作れずに寝ていたら、家内がビックリして兄に助けを求めた、兄には長年助けられ続けてい…