随分昔、家は漁業だけど自給自足できるだけの田んぼと畑も少しあったので農
耕用の黒い牛を飼っていた、毎日僕が餌をやってブラッシングをしてやってい
た、僕が牛小屋に行くと走ってよって来るそして上を向く、ブラッシングをし
ろと言ってるのだ、かわいい!僕は一生懸命に喉のところをこすってやる、気
持ちよさそうにしてる。ある日の朝、親父が牛を引っ張って行こうとするが全
く動かない、尻をたたいてる、牛はモ~モ~と鳴いている、こんなに鳴くのは
初めて聞いた、いつもはおとなしく親父の後を付いていくのに、今日はいつも
行く方向と逆の方向だった、困った親父は近所の酔っ払いの親父を2人呼んで
きて3人で引っ張った、それでも牛は一生賢明に踏ん張って動こうとしない、
何とか引っ張って行った、僕も何処へ連れて行くのかわからなかった。その日
の夕方大漁もしていないのに、親父がクリスマスケーキを買って帰ってきた、
僕は丸い大きなケーキを生まれて初めて見た、上にはイチゴやら、チョコレー
トで出来た板のような物が乗っている、あ~一人で全部食いたいと思う、ケー
キのために晩御飯をあまり食べないようにした、そして食事が終わってケーキ
を食べる時間が来た、家族の誰もクリスマスの意味すら分かってない、ただケ
ーキを食う日と言う認識しかない。ロウソクに火をつけて、電気を消して真っ
暗にした、親父がろうそくの火を吹き消した、すぐにオエッオエッ~と言う声
がする、お袋が電気をつけると親父がオエッ~といいながら部屋を走って出て
行った、ケーキの真ん中にあったロウソクで出来たサンタさんがなくなってい
た。あ~気持ち悪~と言って親父が帰ってきた。翌日僕が牛に餌をやろうと牛
小屋に行った牛の姿はなかった。