随分前のはなしになる、陸の孤島と言われてる所に住んでいた、病院もないの
で、急病になったらまず助からない。盲腸炎でも運が悪いと死ぬ、病気やけが
は祈祷師の様な人がいて拝んでもらう、出来物ができると祈祷師にわけの分か
らない紙を張ってもらう、お礼には魚とか農作物を取れた時に持っていく、非
常にいかがわしい所で育った。高校生の頃に足首の捻挫をした、病院で手当て
をしてもらって1週間くらい松葉杖をつきながら学校に通ってた、腫れもなか
なかひかない、お袋がアッそーだ、はっちょみ爺がまだ生きてるから、生きて
るうちに、はっちょみ爺に診てもらうといい、と言う。はっちょみ爺の家は、
家から歩いて5分くらい、松葉杖をつきながら行く事にした、またどうせいか
がわしいに決まってると思ったが、お袋が捻挫だった絶対治るからと言う、は
っちょみ爺は80歳手前で、手が震えてる、目も悪そうにしてる、足元もおぼ
つかない、大丈夫かな?。どれ!足を見せてみな、座って足の包帯を取った、
足首が赤くなって腫れている、はっちょみ爺は天井の方を見ながら軽くさわ
る、足首をかる~く回す、あ~筋が外れてるな~。そーっと触ってるだけなの
でほとんど痛くない、あ~これが外れてる、ここも外れてる、もうはずれてる
所はないな~、よ~しっ!治ったはずだ!え~わずか5分位だ、うそだろ~。
ちょっと歩いてみな、どうだ痛いか?あれ~全然痛くない信じられない、キツ
ネにつままれたとはこの事だ、帰りは松葉杖を肩にかついでスキップで帰っ
た。50肩も5分くらいで治してしまうらしい、はっちょみ爺は医学の知識も
整体とかの知識も持ってないただの漁師だった。何処でこんな技を覚えたのか
誰も知らない。それから間もなく亡くなった。今生きていたら、ゴッドハンド
と言われて、有名になっていただろう。はっちょみ爺に聞いておけばよかった
な~、脳みその捻挫は治せないのか? (本)