空想じじい

人生は七転び八転び。

我は海の子 8

コウの住む漁師町はよく映画やテレビのロケ隊が来る、特に東映の時代劇の撮影がしょっちゅう来ていた、有名な俳優さんも来てる、だいたい砂浜でのロケだ、自然がたくさん残ってるし道路も舗装されてないし車もほとんど通らない、文明の力のなかった時代の撮影にはびったりだ。コウの兄や姉はよくロケを見に行って、主役の人と一緒に写真を撮ってもらったりサインをしてもらって喜んでた。その映画、テレビが上映される日を町中の人が待ち望んでいる、映画なのかテレビドラマなのか記憶がないが、テレビで見たので撮影からは大分日にちがたってると思った。ところがすでに見た人がいて、すごいぞ!松長の浜の電信柱が、ちゃんばらをしてるバックに写ってるんだぞ。へ~~~それは楽しみだな~。放映の当日はみんないつ電信柱が出てくるのかに神経を集中してて時代劇のストーリーなんか気にしてる人はいない。放映された翌日は、町中その電信柱の話で持ちきりになる、見た見た、え~俺は見えなかったな~。時代劇の内容は誰も覚えてない。ほんと~だ~電信柱が写ってたな~あっと言う間だったんだよハハハハハ~、でもその後の方はもっとすごかったな~、安兵衛屋の白いトラックの天井が写ってた、え~っ本当かい?気が付かなかったな~~~、画面のはしっこの方だったからな~、誰も気がつかなかったのか?あの日はちょうど酒とビールを仕入れに行った帰りみたいだった、荷物をたくさん積んでたぞ~。