空想じじい

人生は七転び八転び。

我は海の子 21

兄貴はとっちゃんの事は大嫌いだったと思う。中学を出たら家の跡を継ぐんだから、漁業と農業をするのに学問は必要ない、ととっちゃんにいつも言われていた。兄貴は勉強もスポーツも大好きだったので進学したくて、一生懸命にとっちゃんを説得しようとしていた。

ところが突然とっちゃんが脳卒中で死んだ。

コウは死んだ人を生まれて初めて見た、状況が飲み込めなくて、とっちゃんはただ寝てるだけのように思ってた。でもじいちゃんが、親より先に逝きやがったこれ以上の親不孝はないわバカヤローと言ってしゃがみこんで泣いた。コウはじいちゃんの泣くのを初めて見てビックリした、これはただ事ではないんだ大変な事なんだと感じた。
 
とっちゃんの葬式の日、兄貴の中学の担任の先生と同級生達が全員葬儀にやって来て外で待っている。

いよいよ出棺と言う時に兄貴が泣き出して動かなくなった。とっちゃんと喧嘩ばっかりしてた兄貴なのに悲しいのか?コウは思った。叔父さんが言う、これからはお前がこの家の主や、悲しいのはお前だけじゃないみんな悲しいんや、男の子が泣くな!しっかりせんか!。

それでも兄貴は動かない。叔父さん達がいらだって何が気にいらないんだ!喪主がそんなんでどうする!と強い口調で言うと兄貴が、頭に白い三角形の鉢巻をするのがいやだ、それを外してもいいなら行く。

う~~~んそうかこのままじゃ日が暮れてしまう、じゃあしょうがない、しなくても良いと言うと。すぐに兄貴に元気が戻った。

それからというもの我が家は、船も売ってしまって、米だけのわずかな収入になった、とっちゃんが死んで貧乏だった家がさらに貧乏になって、兄貴は完全に進学をあきらめた、そして兄貴は田植えと稲刈りの時期には学校を休んでかあちゃんを手伝うようになった。

コウも休みは家の仕事を手伝わされた、夏休み遊んでいる同級生がうらやましかった。