空想じじい

人生は七転び八転び。

我は海の子 11

当時、台風の後の海岸の波うち際はコールタールで真っ黒になっていて歩くと足の裏が真っ黒になった。
 
そして背中の曲がった魚やら、ヒレのない魚がたくさん泳いでいた、特にひどかったのはボラだ、波打ち際を群れで泳いでくる、小学校の高学年のコウたちは、モリを持って先に潜って海草か石に捕まってボラが泳いでくるのを待ち伏せする、でもボラは泳ぐのが速くてとても命中しない、難しいのだ、小学生でボラを突いた人は1人もいなかった、もしボラを突いたら英雄になれる、
 
そして先頭を泳ぐボラは元気がいいので絶対に当たらない、最後尾には背中の曲がった奴やヒレのないボラが必死になって群れについていく、これなら当たるかも知れないと思うが、これを突いても笑われるだけなので突かない、この奇形の魚は食ってはいけないとじいちゃんも言っていた、
 
そして夕食の時に網で取れた新鮮なボラの刺身が出る、でも灯油のニオイがして臭くて食えない、煮付けにしてもやっぱり灯油の臭いがしてるので気持悪くて食えない、ヘソだけ取って食う、ヘソは砂肝のような食感で美味しい、でもそれ以来ボラは嫌いになった、
 
ある時いつものように魚突きに行こうとモリの用意をしてたらじいちゃんが言う、さっき元ちゃんが自分の足をモリで突き刺してモリが刺さったまま痛い!痛い!と泣きながら病院に行ったわハハハハ~、コウも気を付けろ!もしモリを足に突き刺したら抜かないでそのまま帰って来い!と言った、
 
コウは小心者なのでビビってしまった、じいちゃん、今日は良ちゃんと魚釣りに行く事になってたんだ。