空想じじい

人生は七転び八転び。

銀太の冒険 完

それから20年後、銀太は随分成長して故郷に帰ってきた、田んぼも畑も荒れ果てていた。ただいま~と言って玄関のドアを開けたが誰もいない、おかしいな、部屋の中は蜘蛛の巣だらけだ、あ~親父は蜘蛛が好きで昔からたくさんペットとして飼っていた、いつも「くもは1番いのちは2番3時のおやつは文明堂」と楽しそうに歌っていた、カゴから逃げたんだろう。それにしても部屋の中はほこりだらけだ、机の上に手紙が置いてある、遺書と書いてある、さっそく読んで見る「銀太よ、お前が出て行ってからすぐにお前の母親は畑でウンチをしてて尻をマムシに噛まれて亡くなった。そして私は結核のようだ、ゴホンゴホン、しかも2週間も便秘が続いてる、下剤もイチジク浣腸もない、金もない、町まで歩いていく体力もない、動けない、もう長くはない、心残りはただ一つだ、蜘蛛たちに餌がやれない事だ。とりあえずカゴから全部出してやった、自力で餌が取れるといいんだが、それだけが心配だ、おしまい。」そうだったのか、そうだ銀太は自分が出て行ってからの両親の状況を詳しく知るために同級生を探そうとして外に出た、もう日が暮れかかってる、こ1時間探したが誰も見つからない、そうだ!思い出した、俺には同級生がいなかったんだ!日がどっぷりと暮れてしまった仕方なく家に帰った、さ~どうしようか途方に暮れていた、そこに1匹の蛍が部屋に舞い込んできた、季節外れの蛍だな~と思ってしばらく見ていたらもう1匹居た、オスとメスだメスの方は後ろ足で尻を押さえてた、尻でも痛いのかな?ハハハハ~と思いながら銀太はタバコに火を付けた、それに驚いた蛍は飛んで逃げていったかと思ったら、いきなりメスの蛍が蜘蛛の糸に引っかかった、助けようとしたオスの蛍も糸に引っかかった2匹とも蜘蛛に糸でぐるぐる巻きにされた。仏壇に向かって銀太は手を合わせた。お父さん蜘蛛の心配はしなくて良いよ、蜘蛛の餌は十分にありそうだよ、蜘蛛達はたくましく生きてるよ、僕の餌がないよ。