空想じじい

人生は七転び八転び。

銀太の冒険 9

しばらくしてさっき出て行った漁師のテルちゃんが帰ってきた。本日2回目の

ただいま~~っと、おい坊主名前はなんと申すんじゃ?はい、銀太です、そう

か、今日は大漁したから、俺のおごりじゃ、まあビールでも飲め!いや~飲め

ません、なんだと!俺の酒が飲めんのか?さっきトイレに行って手を洗わなか

ったからか?いや~年齢がまだ、バカヤローこの辺にはそんなルールーはな

い、郷に入れば郷に従えだ、はい、わかりました、じゃあ一口、どうだ旨いだ

ろ?にが~~っ、ハハハハハ~最初はそんなもんだ。まあなんだその~~え~

と俺今なにを言おうとしたんだっけ~銀ちゃん?さ~わかりません、なんだ

と!わからん、お前俺をバカにしてるのか?エイの餌にしてやるぞ~、この間

も俺をバカにした奴がいてエイの餌にしてやった、な~大将!そんな事はな

い。銀ちゃんこいつはアホだから、まじめに話しを聞かなくていいからね~。

テルさん随分楽しそうですね、ハハハハ大漁した日だけだ、辛いこともある、

悲しいこともある。数年前おれの同級生だったサルが死んだ、同級生で初めて

の死人だ。テルさんは数年前までサルだったんですか?どうりでサルに似てる

と思ってました、いつ人間になったんですか?そ~だな~5~6年前だったか

な~アホ!そんなわけないだろ。サルは知恵遅れで虚弱体質で中学を出ても字

も書けなかった、生まれて物心ついたときから皆にいじめられ続けてきた、中

学を卒業しても仕事もない、親父さんは大敷網の船に乗っていた、心配した親

父さんがこの子の分まで俺が頑張るから同じ船に乗せてくれと網元に頼んで一

緒の船に乗せてもらったんだ、それが冬の寒い波の荒い日の事だった、サルは

どんくさい、突然海に落ちた奴は泳げないんだ、サルを助けようとすぐさま親

父さんが海に飛び込んだ、だが2人とも亡くなった、サルは人生で1度も嬉し

いとか楽しいとか思った事なく死んでいったんだ。な~~~大将、そ~だな

~、テルが一番サルをいじめたからな~かわいそうに。でもサルが海に落ちた

時すぐに親父さんがサルを助けようと海に飛び込んだ、親父さんが助けに来た

のは見えたと思うよ、サルは生まれて初めて嬉しい!と人生の最後の一瞬に感

じて死んでいったと思う。