空想じじい

人生は七転び八転び。

2本指の男

かれこれ30年ほど前の夏の話になる、大平と言う男がドヤ街に住んでいた、この人は知る人ぞ知る有名な根性悪だ、誰も本気で付き合いをする人がいない、でもお台場埠頭ではフォークの操縦は1.2を争う凄腕の持ち主なんだ、そして俺も大平と一緒にフォークに乗ってお台場埠頭で外国貨物船の荷降ろしの仕事をしていた、扱うものはほとんど製材だ、岸壁には何百人もの人が作業をしている、トレーラーも何十台も走りまわっている危険地帯だ、地面を歩いてる人をひかないようにするのが一番気を使う。6トンと13トンのフオークリフトで狭い場所で全速力で走り回る、アクセルを全開で走らないと首になる、船は出港時間が決められてるのでそれまでに積荷を全部降ろさなければいけないからだ。周りの人間はほとんど背中や腕にシールを貼っている。事故で年間何十人も大怪我をするし3~4人は死ぬ。昼休みになると大きな休憩所で皆が集まって昼食をとる、終わると缶コーヒーを買いに行く人を決めるのに皆でじゃんけんをする、ところが30人くらいでじゃんけんをしても一発で決まる。それはいつも佐藤さんだ!。佐藤さんはどん臭くて、よくフォークから荷物を落として、歩いてる人を怪我させる。その日も怪我をさせて少し落込んでいた。よ~~~しじゃんけんするぞ~皆集まってくる。佐藤さんが言う、また俺だよ、たまには阿弥陀くじにしようよ~~~。駄目だ!じゃんけんが一番公平なんだ、阿弥陀くじなんかめんどうくさい!!!。さあやるぞ~~~ジャ~ンケンポン。大平と佐藤さんがグーを出した。後の人は皆パーを出している。大平は今日は俺が負けた事にしてやる俺が買って来てやると言ってフォークに乗って出て行った。佐藤さんは両手を合わせても親指が2本しかない。佐藤さんはグーしか出来ないのだ。