たぶん小学年6年生だったと思う,修学旅行の前日、先生が校庭に、横断歩道
を書いてる、皆を外に呼び出す、えーこれが横断歩道です信号が青に成ったら
この上を渡ります真ん中までは右手を上げて、真ん中を過ぎたら左手を上げま
す、順番にやってください、先生!信号ってどんなんですか?赤黄青と変わる
ライトです、行けばわかります、何度か練習した、誰も信号も横断歩道も見た
ことがない、大阪、京都、奈良だと思った、お小使いは500円、それ以上
は、持ってこないように、でも皆靴下に隠してもってきた、僕はそういう事は
したくても出来なかった、親父が死んで間もなくだったので、お袋は途方にく
れてるし、船も売ってしまった、貧乏だったのが大貧乏に変身してしまった僕
も家がもっと貧乏になったのは子供なりに理解出来てた、修学旅行の準備は楽
しかった、でも大きな不安が1つある、まだ、寝小便をたまにしてる、小学5
~6年生で寝小便をするのは非常に珍しい。外に干してある寝小便の布団を見
て爺ちゃんが言う、今日は日本地図描いたのか~?ちょっと曲った日本地図や
な~、あっ!九州を書きわすれとるがな~!この前はすばらしい世界地図描い
たのにの~、へたになったな~、早く地図描かなくてもよくなるといいな~。
その日の夜、爺ちゃんが、どんぐりをフライパンで炒ってる、寝小便に効く薬
だ、これをたべれば寝小便はしなくなる、と言うので食べた少し苦かったよう
な記憶がある、翌日出発前にお袋が、小遣いは全部使うなよ!と言うガッカリ
したが、不安と期待を持って出発した大阪の交通量にはびっくりした、あ~あ
れが信号や!全員が注目する、お~色が変わったよ~、青になる横断歩道をわ
たっているのに車が入って来る、これにはびっくりした、逃げるように渡っ
た。その夜旅館へ大阪に住んでる叔父さんが、家に持って帰るようにとお土産
をたくさんくれた、これで土産を買わなくて済んだよかった、楽しかったのは
部屋でみんなで枕なげをして遊んだ事くらいだった、それでも寝る前には寝小
便しないかと不安がよぎる、最後の日の朝寝小便してなくてやっと安心した。
お土産は爺ちゃんがタバコを吸うので、爺ちゃんに奈良で鹿の角でできたキセ
ルを買って帰った、それしかお金は使わなかった、と言うよりお袋の言葉が頭
に残ってて使えなかった。爺ちゃんが言う、お~ありがとうよ~、これな~前
からず~とほしかったんや、うれしいな~と言ってくれた。でも爺ちゃんが死
ぬまで、そのキセルを使ってタバコを吸ってる姿を1度も見る事はなかった。
(本)