空想じじい

人生は七転び八転び。

死に方

自分の死に方を自分で決めて何が悪いんだ。
 
権太には身寄りがない、仕事も歳を取りすぎて何処の会社も雇ってくれないし自分で商売をする資金も商才もない、頼れる親も兄弟も親友もとっくに亡くなった、助けてくれる人も周りにはいない、さらに貯金も底をついた、アベノTAXで物価も税金もどんどん上がる灯油も買えない、毛布も買えない、寒い!、しかもガンの手術から体力も気力もなくなった。
 
もう2週間もろくに食べてない、いよいよ最後の権太の大好きなサバの味噌煮缶が1個になった、権太は決心した、これを食べ終えてウンチをして今夜遅くに決行しよう。
 
障害を持った娘達には本当に申し訳ない。一応娘達に遺書を書いておこう。お父さんは君たちからたくさんの幸せな時間をもらった本当にありがとう、お父さんは幸せでした、でももうお父さんは限界です、ごめんね。
 
家内にも書かなくっちゃ、え~~~っとこの間家に来た時に俺のダウンジャケットを間違えて着て帰っただろ、色とメーカーが同じだったからね、お前のジャケットは小さくて着れないんだよ、俺は寒くて死にそうなんだ、風邪をひいたらどうするんだ、今度来るときに必ず持って来い。
 
今まで病院でもらった睡眠薬をいざという時のためにこつこつと貯めてきた、約300個くらいあるから1度に全部飲めば眠るように一気にあの世にいける、いよいよその時が来たようだ、俺の人生には大していい事もなかった辛く苦しい事の方がはるかに多かった、これ以上生きてても良い事は1つもないだろう、もう思い残す事は庭にある犬のウンチを取ってない事だけだ。
 
さて時がきた、あっ!睡眠薬を飲むにも水道を止められてるので水が出ない、困ったな~、そうだ!牛乳で飲もう、でもな~牛乳だと俺はお腹を壊して1週間は大変な思いをする事になるからだめだ、そうだペットボトルにお~い茶が少し残ってる、権太は300個の睡眠薬をそのお茶で一気に飲み干した。
 
突然トゥルルルル トゥルルルル、電話が鳴った、留守電にしてある、もうなんにも俺には関係のない事。
 
ただ今留守にしています御用の方はピーとなったら~もしもしお父さん大変だよ年末ジャンボ宝くじ7億円当たったよ、お父さんの好きなサバの味噌煮缶とカッパエビセンを1年分買って明日の朝そっちに行くからね楽しみに待っててね、もう貧乏とさよならできるんだよ。
 
えっ!なんだって!7億円、明日?遅いんじゃないか?あ~~~まぶたが重くなってきた、体が動かない声も出ない電話に出れない~、生きたいよ~~~~助けぇぇぇぇぇ~~~。