空想じじい

人生は七転び八転び。

花の係長が不老不死の薬を発明した 前編

花の係長50歳はついに不老不死の薬を発明した、この研究に箱根の別荘の地下研究所に10年たてこもった。その間に母親が亡くなった事すら知らなかった、10年ぶりに実家に帰って愕然とした。去年亡くなったらしい。もう少し早く発明できてたら母親も助けられたのに。くやしくてフライパンで自分の頭を幾度となくたたき続けた、頭がたんこぶだらけになって目まいがしてぶっ倒れたフライパンも壊してしまった。1個しかない思い出のフライパンだったのに、もったいないことをした。貧しかった少年時代が脳裏をかすめる、100坪ほどの畑にキャベツと芋を作っていた、売るほどのキャベツも芋も出来ない。春になると係長はよく山菜を取りに行ってワライタケを食べてしまって1日中笑っていた。あばら屋に母親との2人暮らし、部屋には裸電球が1個、暖房器具もない晩御飯のおかずはいつもキャベツ2個マヨネーズを付けて母親と2人で丸かじりをする、時々キャベツに付いてる青虫も一緒に食べてしまう、ちょっと苦い。食事はそれだけだった、でも母親はそれでも笑顔を絶やす事はなかったので係長には貧乏をしてると言う感覚がなかった。係長は後悔の念に駆られながら箱根の別荘に母の位牌を持って帰った、でも位牌を電車に置き忘れてきてしまった。その夜はしたたかに呑んだ、母の事が次から次に走馬灯のように浮かんできて涙が止まらない、涙が洗面器いっぱいたまると外に捨てに行った。酔っ払っているので玄関で転んで右足首を骨折した。朝方まで飲み続けた。失意のなか冷蔵庫に小さなコップに小分けして入れてある不老不死の薬を2杯飲んだ1杯で10年若返る量にしてある。30歳まで若返った、髪の毛がふさふさに生えてきた、目も見えるようになった、切れ痔も治った、水虫も治った。だが係長はその事に気が付いてない、なんせ酔っ払って意識がもうろうとしてる、そうだ!母と楽しく過ごした10歳代に戻ろう!さっき2杯飲んだ事をすっかり忘れてる、え~と今50歳だから4杯飲めばいいか。一気に4杯飲み干した。突然係長は消えてしまった、すると係長の箱根の別荘の庭にたくさんのキャベツが生えてきた。