空想じじい

人生は七転び八転び。

U君

僕が転職して新しい会社に入った20人くらいの小さな会社だ、U君と言う生意気な餓鬼がいた、僕より5つ年下だ、会社のそばに控え室が用意されている、昼休みになり僕が控え室でウイスキーをのんでいた、僕の方が生意気だったのかもしれない、U君が入ってきた、ちょっとビックリした様子で何も喋らない、飲むか?、ああ、たいした話はしなかった、U君はほんの少しだけ飲んだ、仕事が終わると、U君が、クソジジイ、飲みに行こうか?ああいいよ、5人くらいで飲みに行く、何処に行っても皆U君の事は知っている、店の客まで、おい随分有名人だな、ああ、毎日飲み歩いてるから、随分酔っ払った、U君歌歌えよ、俺音痴だから、上手な歌を聴きたい訳じゃないから、そんじゃあ、イントロが始まるすぐにうたいだす、おいまだイントロだよ、あ~、よし行け、今度はだいぶ遅れてスタートする、音程がめちゃくちゃ外れてる、しかも歌詞を読んでるし、皆噴出してしまった、他の客も大笑いしてる、ばつが悪いのか、辞めようとする、最後まで歌え!歌いだす、おかしい、腹が痛い、痛い痛い、終わる、最高だよ、日本一だよ、こんな面白い歌を聴いたのは初めてだ、そんなに喜んでもらうと嬉しいな~、ママさん水割りおかわり。U君とはそれ以来30年以上たつが今も僕に何かあると一番心配をしてくれるやつだ、たぶん一生親友であり続けるだろう、ある正月、U君に家へ来いと言われたので、行った、庭の広い家だった、この周りの田畑は全部俺の家の田畑だったんだ、今は、この家だけや、とにかく家に入れよ、沢山ご馳走がある、おい親父!酒持ってこい、おい、ずいぶん口がわるいなお前、いいんだよ、親父さんが持ってきた、息子がいつもお世話になってます、クソジジイの事は息子から聞いてます、ゆっくりしてって下さい、いえこちらこそ、ありがとうございます、一緒に飲みましょうよ、と言うが、ゆっくりしていってな、と言って出て行った、穏やかな人の良さそうな親父さんだ、U君と正反対だ、U君、親父さんは一緒に飲まないのか?ほっとけ、親父はもう酒は止めたんだ、帰りがけに、外でU君が、クソジジイ、だいぶ前に学生を酔っ払い運転で4人引き殺した事件覚えとるか?ああ、新聞もテレビも大騒ぎだったなあ、あれな、家の親父や。

追伸 僕には交通事故の加害者側にも被害者側にも友達がいます、複雑な心境です。