空想じじい

人生は七転び八転び。

喫煙所の不良

むかし、僕の知り合いの、知り合いの、他人に、乾君が居た、病院の喫煙所でしょっちゅう会う、30代半ばだ、態度がでかい、体もでかい、声もでかい、病室にいる時間より喫煙所にいる時間の方が長い、あんたここに住んだ方がいいんじゃないの?、ああ俺もそう思う、でも俺の病室は一番遠くだからここまで歩くのが良い運動になる、僕はパニック障害で1ヶ月ほど入院していた、ある日聞いてみた、一日にどの位タバコをすうんですか?そうさな~4箱くらいだな、大したヘビースモーカーだね、いや~それほどでも、ほめてるわけじゃない、それで何処が悪くて入院してるんだい?頭のほかには、胆のうの検査をしてる、どうもガンらしい。翌日も会う、喫煙所へ行けば必ず会う、どうだ検査の結果は、ガンだ、体中にできてるらしい、人ごとのように言う、怖くないのか?ぜーんぜん、俺は小さい時から何度も地獄に落とされてる、これくらいは大した事に入らない、俺は施設で育った、親は生きていて近くに住んでいる、親からたまに電話が来るときは、必ず、金くれだ、それ以外の用事で電話してきた事が無い、それで金をあげるのか?ああ、バカじゃないの?親に捨てられたんだろ?ああ。でもあの親だから俺は強くなれたと思ってる、ひたすら前向きなやつだ、もう一回言うバカじゃないの、翌日も会う、明日ガンセンターに送られる、そうか生きて帰って来いよ、当たり前だろ、俺は地獄から這い上がる男だ。それから3年後、外科の待合室で見たことのある人が居た、乾君だ、生きてたか?当たり前よ、言っただろうが、地獄からはいあがる男だって、切れる臓器は全部切った、指をおって数えだす7本くらい折ったところで、空を見上げる、分からなくなってしまったみたいだ、その後抗がん剤だ、大変だったな、ぜーんぜん、手術の後すぐにタバコを吸って先生におもいっきり怒られたガッハッハッ、もうすっかり治ったわガッハッハッハ、じゃあ何でここへ、今度は妻がガンで、奥さんを椅子に寝かして、ちょっと、タバコ吸いに行こうと言う、一緒に行く、妻は駄目らしい、しかたないさ、また人事のように言う、そうか3年前に奥さんを見たことがあったが、今はその時と違って、痩せ細って青い顔をして、別人になっている。それから毎月会う、先月会った時には、奥さんは、顔色も良くなって、しっかり歩いてた、ビックリした。