最近薬が増えてからきょんはテンションが高すぎる、茶碗を流し台にほうり投
げる、家内が嘆く、こんな乱暴な子じゃなかったのに、だが源之新はこれが本
来のきょんなのかも知れない?今までいい子を演じてきたんじゃないかと思
う、そうだとしたら辛かったろう、つかれたろう。最近いろんなことをやりた
がる、テンションが高すぎるのが少し心配だ。以前に入院していたときの主治
医、五条先生は、徐々に薬は減らして行きましょうと言って、徐々に薬は増え
ていった。源之新にはトラウマになっている怖い。今度はボランティアをやる
と言い出した、自分で福祉施設に電話をして週2回行くことに決めてしまっ
た、ボランティアをしてほしいのは家だ!そんな事はきょんに言えない。家の
前にバスの始発駅、桃源郷バス停があるので行きは簡単だ、でも帰りのバスの
乗り方が難しいから迎えに来て!と言う、わかったそうしよう。何度か行っ
た、元気に帰ってくる、楽しいというだけでそれ以上しゃべろうとはしない。
今度は帰りも一人でバスで帰ってくると言う、わかった挑戦してみなさいと源
之新が言う。じゃあ今日は行きも帰りも自分で行って来るね!といって出かけ
た。それから20年がたった、ちょっと帰りが遅い源之新は心配になってき
た、どうしたんだろう?やっときょんから電話が入った、おとうさん、朝降り
たバス停で待ってるんだけど、ここに止まるバスはみんな駅に行くよ、桃源郷
行きのバスは来ないんだよ。きょん!桃源郷行きは道路の反対側から乗るん
だ!