空想じじい

人生は七転び八転び。

うば捨て山

私も、もう60を過ぎた、息子よ、この台風が過ぎたら山へ、私を捨てておくれ、欲張りで怠け者の息子、種蔵は、わかった、明日には台風も通過するから、明後日の朝出発しましょう、当日の朝、お婆さんをおんぶして山の中へ、お婆さんは木の枝を折り始めた、3里ほど山の中に入った所で、投げ捨てるように下ろされた、枝を折ってきたから、それを目印に帰れば、家に帰れるから、と言ってわずかばかりの金を渡すと、息子はスキップをして鼻歌まで歌って、帰って行った、ふと見るとクワが落ちていた、お婆さんは、たまたま、ネギ、大根、にんじん、トマト、きゅうり、なすび、かぼちゃ、ゴーヤ、の種を持っていたので、撒いてみた、すぐに芽が出る、なかなか良い土だ、しばらくすると、こんどはお爺さんが運ばれてきた、お爺さんは大工だった、ふと見るとノコギリが落ちている、家を作る事にした、爺さんと婆さんは、力を合わせて死ぬまで生きる事に決めた、しばらくすると、爺さん婆さんがぞくぞくと運ばれて来た、みんなで生きることにした、皆自分のキャリアを生かして力を合わせ色んなものをあっと言う間に作ってしまった、温泉まで出た、米も野菜も無農薬だ、この無農薬が当時はめずらしかったので、NHKクローズアップ現代が取材に来て、テレビで放送したのがきっかけで、青果市場から問い合わせが殺到する、温泉目当てに旅行会社からも問い合わせが殺到した、中国、台湾、からも問い合わせが来た、東京ドーム100個分の広さを開拓し、いろいろな施設が出来あがっていた、病院、温泉プール、ホテル、劇場まで出来ていた、こうして一大レジャーランドが完成した、スパ・ウバステランドと名前を付けた、もちろん爺さん婆さん達は株主で、使用料は無料だ、一方、怠け者の種蔵は、いまだ家にたどり着けないでいる、台風でそこらじゅうの枝が折れていて、訳がわからなく、なっていた。