空想じじい

人生は七転び八転び。

逝ってしまった秀

3歳年上のいとこの秀、面白い人だ、「口癖は時間が無い」だ、風呂に入らない、本が読めないから、床屋に行かない、本が読めないから、秀の家に行くと山積みの本の中から亀みたいに顔を出す、服を着替えるのは年に4回季節の変わり目、靴は作業靴指先に鉄が入ってるやつ、大金が手に入ったらどうする?世界中の本を買いたい、本は読めても空気が読めない、時々時計も読めなくなる、連休には3日くらい寝ないで本を読んでる、尋ねて行くと、今何日?13日、あっ3日間何も食わずに本を読んでた、どおりでお腹が空くと思った、じゃあ飲みに行くか、で飲みに行く、本を10冊くらい持って行く、何時もの事だ、2時間くらい飲み食いしてる間に全部読んでしまう、読む本がないと落ち着かなくなる、じゃあ家に帰ろうかで帰る、秀の部屋で飲み直す、何か辞書、百科事典、の類が無いどうして?ハハハハハ大笑いしてる止まらない、頭の中に入ってる、必要ない、笑うツボが俺達とは違うコンピュータの質問をしようかと思ったけど、3日ぐらい説明が続きそうなので、危ない、今までどの位の本を読んできたのか?10万冊ぐらいかな。難しい本は読みたくないので、文句なく笑える本を教えてくれ、俺も読んでみるから、そうだな沢山あるけど、筒井康孝、かな、5冊ほどもらう。秀と一緒に、釣りに行くと、右手に竿、左手に本、竿を揚げる、釣り針を付けてない、卓球に行く玉を追いかけてダイブする、遊びでやってるのにそこまでする事は無い、何をやっても全力だ、水槽に蛙を2~3匹入れ様と思って一緒に取りに行く、秀が帰って来ない、見に行く、どうしたの?一万匹くらい必要と思って探してる、蛙の研究するわけじゃない。居酒屋に行く本を読みながら話す、隣のグループの話まで聞いている、いきなり隣の話にわりこんで、あんたのデータ間違ってるよ、隣のグループはビックリしてすぐに帰っていく、店の大将は困った顔をしてる、ある日突然、秀が居なくなった、それから何年かたった、兄から電話が入る、秀が死んだ、まだ36歳、どうして?突然死だ、体に力が入らなくなった、秀がいつも言ってた「時間が無い」の意味がやっと解った、秀は知ってたのか。